エアバッグスーツ。レーシングに特化した魅力を解説。

作成日 2020年7月13日
By 鈴木(スズキ)

MotoGPでは2018年から、全日本ロードレースでも2020年から、エアバッグの装着が義務化され、エアバッグスーツの存在感はさらに増してきています。

安全なサーキット走行を楽しむためには、保護能力の高い、レース専用設計のバイク用エアバッグを選びましょう。

ここでは、従来のハードプロテクターに比べてどのくらい安全なのか、どのようなときに起動するのか、コレクション一覧の紹介などについて、全体的に解説をします。

本格的なサーキット用のレーシングスーツが欲しくなってきた方は、ぜひ参考にしてお選びください。

1. D-air® Racing が対象とする事故

D-air® Racingが対象とする事故、クラッシュは以下の通りです。

  • 環境:サーキット場内の走行中のみ。公道は対象外。
  • かつ、時速50km/h以上の速度

    において

  • ハイサイド
  • 回転をともなうローサイド

    が発生したとき

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まず、サーキットと公道では、事故がおきる要因や外部の障害物など、環境がおおきくことなります。そのためD-air® はそれぞれの環境に特化した情報がプログラムされています。

たとえば、公道では時速10-20km/hで交差点を曲がっているときであっても、対向車との右直事故などがありえますので、エアバッグが起動する必要があります。一方サーキットでは、その速度域であればおおきな致命傷になる可能性はあまりないため、起動の対象とはなりません。

その他にも、ローサイド(タイヤがすべって転倒する、スリップダウン)による事故の場合も、公道であればガードレールや周囲のクルマなどに衝突するリスクがありますが、サーキット場ではそのままグラベル~セーフティエリアへと避難できる仕組みもあり、危険な事故になる可能性はないでしょう。

ただし、ローサイドの動きであっても、回転を伴う場合(身体が回転すること。例えばバイクや路面にスーツの一部がひっかかり、回転してしまうなど)は、ねじれや衝撃が大きくなり、けがにつながる可能性があるので、起動する対象となります。

ハイサイドについては、公道、サーキット共に危険なクラッシュにつながるため、起動します。

速度が50km/h以上、とありますが、これを厳密に測定するためには、正確な速度計測が必須であり、そのためにGPSが搭載されています。

なおヘアピン直前で急減速をして50km/h以下になり、転倒した場合などは、直前に高速だったことが考慮されエアバッグが起動する場合もあります。

サーキット、公道。それぞれ異なる条件下で安全にライダーを保護するため、ダイネーゼではそれぞれ独自の仕組みをもうけているのです。

2. ハードプロテクターとの安全性能を比較する

エアバッグを検討されている方の多くは、「どのくらい安全なのか」という点が非常に気になるところでしょう。

特にその中でも、テストにより計測し数値化できる「衝撃の吸収能力」は、客観的に比較しやすく安心感につながりやすい項目です。

エアバッグの試験は様々です。ダイネーゼでは、エアバッグにかかわらず、一般のハードプロテクター、ソフトプロテクター、すべてにおいて欧州安全認証を取得しています(EN xxxxxから始まる各認証)。

D-air® Racingについては、レーシング専用であるため、肩や鎖骨、首周りを中心に保護します。

バックプロテクターや胸は従来のハードタイプを使うため、安全認証は対象外です。「なぜ背中と胸はついてないのか?」という質問に対しては、エアバッグの膨張速度や、軽量化の観点から考えられ、レーシングに最適化された結果であるといえます。

サーキット内において、背中と胸は、ハードプロテクターで保護できることが多く、にもかかわらず、全体をエアバッグでおおって、バルキーで動きづらい格好で、過剰なプロテクションとともに走行することは合理的ではありません。MotoGPのプロフェッショナルライダーたちも同様に、D-air® Racing + ハードプロテクターのセットで戦っていることからも、その選択肢が一般ライダーにとってもベターなものと考えてよいでしょう。

それでは、骨折しやすい肩~鎖骨の衝撃をどの程度緩和するのか、具体的な数値をグラフで見てみましょう。

エアバッグのプロテクション能力グラフ

左から:

  • SHOULDER LEVEL.1(基準) : 欧州安全認証が定めた、「平均がこの衝撃より低くないといけない」値
  • SHOULDER LEVEL.1(ダイネーゼ製) : ↑に対し、ダイネーゼが社内で設けている基準値。

  • SHOULDER LEVEL.2(基準) : レベル2(さらに高度なの衝撃吸収能力を求める基準)の、欧州安全認証が定めた値
  • SHOULDER LEVEL.2(ダイネーゼ製) : ↑に対し、ダイネーゼが社内で設けている基準値。

左の4つのグラフを見ていただくと、LEVEL.1 LEVEL.2それぞれに、欧州安全認証があり、それに対してダイネーゼ社内で独自に設けている「さらに衝撃を緩和できる基準」があることがお分かりいただけます。

縦軸の「KN」という単位は、衝撃の強さをしめします。SHOULDER LEVEL.1(ダイネーゼ製) であれば、規格に則った衝撃に対し、ライダーが受ける強さが平均31KN以下でなくてはいけません。

そして一番右の「ダイネーゼ製ワイヤレス式エアバッグ」。これがD-air® Racingの性能です。

同試験の衝撃に対し、ライダーが受ける衝撃はわずか2KNであり、一般に広く普及している「SHOULDER LEVEL.1(基準)」と比較すると、実に94%もの衝撃を緩和していることがわかります。

これは、外部のハードプロテクターとエアバッグの組み合わせセットではなく、エアバッグ単体による結果であるという点も重要です。

3. 保護範囲について知る

D-air® Racing と Road では、理想の保護範囲がことなる、という点をぜひ知って頂きたいと思います。それはなぜでしょうか?

ダイネーゼでは「アクティブセーフティ」と「パッシブセーフティ」という2つの安全性に対する考え方を重視しています。

パッシブセーフティとは、実際に衝撃を緩和することですが、「2. ハードプロテクターとの安全性能を比較する」で解説したようなことが、まさにパッシブセーフティです。

しかしここで取り上げる「アクティブセーフティ」では、"そもそも事故にあうことを避ける"という、事故/クラッシュの前段階の観点から考えます。

スーツ型エアバッグをデザインするにあたり、必要以上のプロテクションは、動作性を妨げ、また重量増につながってしまうでしょう。

エアバッグが大きく、重く、身体の動きが制限され、快適性を失うようであれば、それは集中力を欠く結果となります。

つまり、そもそも事故にあう事を避けるというアクティブセーフティ能力が低下することになるため、エアバッグシステムのデザインと保護範囲はとても重要と考えられます。

ダイネーゼのD-air®はそのようなコンセプトに基づいています。

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D-air® Racingでは、画像のように首周りから鎖骨、肩にかけてのエリアをカバーします。膨らむ前のエアバッグは非常に薄く、ライダーの集中力には影響しない設計になっています。

小容量で済むため、完全に硬くなるまでの時間(インフレーションタイム)が短く済み、一瞬で最高強度になります。

4. D-air® Racing搭載の製品一覧

D-airRacing

製品一覧については、新作の販売やモデル変更などがありますので、ダイネーゼジャパン公式サイトのD-air® Racing のカテゴリにアクセス頂く事をおすすめします。最新のカタログがご覧いただけます。

5. プロフェッショナルライダーたちのテスティモニアル

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Valentino Rossi
「D-Airなしでサーキットに行くなんて考えられないよ。僕にとっては安全性の大きな飛躍なんだ、特に肩と鎖骨のね。」- 2017年

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Max Biaggi
「D-airと同じくらい重要な進歩は他にはありえないと思っています。見えないプロテクションなのに、一旦起動すれば従来のスーツと比べて80%もプロテクション能力が向上しているなんて。まさにDaineseの天才的な発想だね、考案したのは彼らですから。」- 2011年

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Guy Martin
「D-airを搭載したレザースーツと通常のスーツの違いを見分けるのは至難の業だね。本当に素晴らしいよ。10秒後にはエアバッグが収縮して、またレースに戻れるのだから。」- 2009年

 

さらに「D-air®」について知りたい方は、すべてをまとめた以下の記事をおすすめします。
バイク用エアバッグ「D-air®」 その仕組み、選び方、プロテクション性能を解説

 

関連サイト

 

Tags: モーターサイクル, D-air®(エアバッグ)

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