「D-air®」はどのようにして事故を判断し、起動するのか。

作成日 2020年7月14日
By 鈴木(スズキ)

D-air®の仕組みを知ることで、エアバッグの特徴がお分かりいただけることでしょう。

D-air®には大きく分けて「Racing」と「Road」の2つのシステムがあります。
これはそれぞれ、何が違うのか?どのように機能しているのか?

ここでは、D-air®の仕組みについてひとつずつ丁寧に解説します。

1. 仕組みの概要

D-air® の内部には、25年にわたる研究と200万km以上の走行データが蓄積されており、これが他に類を見ない、正確で安全な起動を可能にしています。

200万kmの走行データには身体の動き、加速度、角度が総合的に記録され、事故が起こる状況を自動的に察知し、ライダーを保護するために起動します。

まずはじめにレース用「D-air® Racing」と、ストリート用「D-air® Road」は仕組みが異なります。

これは、危険とされる動きや、周囲の障害物の影響が全く違うためです。例えばサーキットでは、停車時に、後方から衝突されることを考える必要はありません。

D-air® Racing搭載モデルはサーキットでのみ使用し、D-air® Road搭載モデルはストリートでのみ使用するようにしましょう。

それぞれ異なる環境で使った場合には、正しく機能しない可能性もありますので注意が必要です。

2. D-air® Racing と Road の共通点について

個々の特徴を見ていくまえに、まずは共通点について解説します。これはD-air®全体の特徴であり、どのタイプのモデルも同じです。

(共通) GPS、センサーによる動きの解析

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ダイネーゼのエアバッグは完全なワイヤレス式であり、ご自身のバイクとの連結は一切必要としません。ケーブルでつなぐこともありません。

内蔵されたシステム部分には、「3つの傾斜センサー」「3つの加速度センサー」「GPS」と計7つのセンサーが含まれており、ライダーの体の動きを毎秒1000回モニタリングしています。

傾斜センサーはバンク角などを、加速度センサーは衝突した際の急な減速を感知しています。

そして、GPSがあることで、もっとも重要な正確な走行速度が解析され、D-air®が事故・転倒時の動きを瞬時に捉えて起動します。

なおGPSが届かないエリアを走行中であっても、途切れる直前の走行データを保持するため、トンネル内などでも安全に機能する仕組みになっています。

(共通) エアバッグの内部構造

エアバッグそのものは、いずれも同じ素材と、同じ構造です。

もっとも重要なのは、すべての面が均一に約5cm膨らむことで、安全性にかたよりがないという点です。

この動画では、左が他のエアバッグ、右がダイネーゼのエアバッグです。

特許取得済みの糸のような繊維(マイクロフィラメント)が張り巡らされていることで、ガスが充満した際に、エアバッグのかたちがかわらず、一定の厚みで開く構造がおわかりいただけます。

左の構造の場合、衝撃が加わる場所によって厚みがことなるため、吸収能力が一定ではありませんが、ダイネーゼのエアバッグは、どの場所も一定の厚み = 吸収能力も一定です。

クルマ用に代表される一般的なエアバッグと D-air® の違いは大きく、マイクロフィラメント技術を使用していないエアバッグは、内部の空気の流れを制御することができないため、均一に膨らみません。

マイクロフィラメントにフォーカスした動画は、以下がわかりやすいでしょう。

従来のクルマ用で使われている"膨らむ"エアバッグは、ドライバーの顔などがあたることが想定され、風船のような構造です。

しかしバイク用に採用されるべきエアバッグは、障害物の衝撃から身体を守る、ハードプロテクターとしての要素が求められます。

エアバッグの内圧は、モデルによって1.25~1.75気圧の間で変化します。ダイネーゼでは、これほどの圧力があって初めて、保護するのに十分であると考えています。

D-air® Racingの肩のプロテクションで、従来(※1)の94%もの衝撃をカット。スマートジャケットに搭載された、D-air® Roadの背中のプロテクションで、一般のバックプロテクター(※2)、7個分相当の衝撃吸収能力があるなど、わかりやすく言えば、その「硬さ」は共通です。
※1欧州安全規格EN1621-1-2012 を基準 ※2ダイネーゼ製Wave D1

3. D-air® Racing 独自の仕組み

それでは次に、D-air® Racing独自の仕組みを見ていきましょう。

エアバッグが起動するトリガー - Racing編

システムの中には、サーキット場内での動作、クラッシュの傾向がインプットされており、以下の2パターンの動きに反応します。

  • ハイサイド
  • "回転を伴う"ローサイド

d-air_road_caduta-2d-air_road_caduta-3-1サーキット用であるD-air®Racingは、ハイサイド、および回転を伴うローサイドを対象とする。

ローサイドについては、回転を伴う場合にのみ起動します。
身体が回転しない場合(ただ滑りながら、グラベルに達するなど)は障害物がないサーキットにおいて危険度が低いこともあり、起動することはありません。

また同様の理由で時速50km/h以下でも起動しない(※)仕組みです。これを可能にするのが、GPSによる正確な速度把握です。
※ヘアピンなど、高速からの急減速で直前にスピードが出ている場合は、50km/h以下でも起動する場合があります。

保護範囲 - Racing編

D-air® Racingは、鎖骨・肩・首周りを守るために特化したデザインであり、胸や背中は、従来のハードプロテクターで保護します。

小容量のため、完全に硬くなるまでの時間(インフレーションタイム)が短く済み、一瞬で最高強度を実現します。

また省スペースかつ軽量な点も、サーキットにおいては重要です。

スーツタイプエアバッグの保護範囲最上級モデルには、肋骨までカバーするエアバッグも付いている。

ダイネーゼでは、過去300回以上のクラッシュでも、鎖骨・肩の骨折がゼロだったという実績があります。

サーキットで起きる激しいクラッシュでは、首周りをエアバッグで膨張させ、頭の動きを制限することで、致命傷を防ぎます。

4. D-air® Road 独自の仕組み

最後に、D-air® Road独自の仕組みを見ていきましょう。

エアバッグが起動するトリガー - Road編

システムには、ストリートでの動きやリスクがインプットされており、逆にサーキットの動きは含まれていません。D-air® Road が起動するのは、以下のケースです。

  • ハイサイド
  • ローサイド(回転を伴う、伴わないかかわらず全て)
  • アイドリング停車中の360°からの衝突
  • クルマやガードレールなど、障害物との正面衝突(45°~135°の範囲でもっとも有効)

d-air_road_caduta-3-2d-air_road_caduta-1障害物が多いストリート向けD-air®Roadは、ハイサイド、ローサイド(回転するしないにかかわらず)のみではなく、衝突にも対応する。

街中やツーリング先では、対向車などサーキット以上に危険な状況が考えられるため、様々な動きに対応します。

特に注目したいのが、アイドリング停車中にも、バイクの振動を感知する状態であれば、衝突に反応するという点です。これは後ろからはもちろんですが、360°どの方向から衝突されても起動します。

またD-air® Racing が50km/h以上で起動するのに対し、D-air® Roadは時速10km/h以上で起動します。ストリートでは、低速走行時でも危険な状況が多いためです。

この時速10km/hがどのようなときに役に立つのか、については、振動がない電動スクーター、振動が少ない車両が考えられます。

アイドリングによる振動を感知することができれば、時速0km/h~すべての状態で保護されますが、振動が無い、または軽微な場合はアイドリングを感知することができません。

そのようなケースでは、時速10km/h以上になった時が"アームド"状態するとなります。これには正確に速度を感知するGPSが役に立ちます。
※アームド ... スタンバイが完了し、D-air®がいつでも衝撃に対して反応できる状態。

保護範囲 - Road編

障害物や対向車があるため、致命傷の第2位である、胸部を中心に保護する目的があります。そのためより広範囲であることが特徴です。

  • ジャケット内蔵型の場合は、肩から鎖骨~胸全体をカバーし、背中は従来のハードプロテクターで保護します。

ジャケットタイプエアバッグの保護範囲

  • ベスト型の場合は、背中の全面と、肩から鎖骨~胸全体をカバーし、胴の全てをエアバッグで保護します。

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モーターサイクル用エアバッグの欧州安全認証については、以下の通りです。

  • 胸部用のDOLOMITICERT procedural guideline (2016/425) - Level 2(EN 1621-4 L2)を取得しています。

  • 背中用の、DOLOMITICERT procedural guideline (2016/425) - Level 1(EN 1621-4 CB L1)を取得しています。

  • 2020年現在、エアバッグ単体(※)で、胸部と背中の両方で当該規格を取得しているのは、世界で唯一スマートジャケット搭載のD-air® Roadだけです。
    ※... 単体とは、バックプロテクター等との併用も必要とせず、エアバッグのみで規格を取得していることを示します。

これはダイネーゼが自社ではなく、第三者機関によるテストを行うことで公平な情報を、一般のユーザーに提供するために行われています。

この安全性能をわかりやすく表現すると、たった5cmのD-air® Road エアバッグで、従来の背中用ハードプロテクター x 7枚分の効果があるのです。

 

さらに「D-air®」について知りたい方は、すべてをまとめた以下の記事をおすすめします。
バイク用エアバッグ「D-air®」 その仕組み、選び方、プロテクション性能を解説

 

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Tags: モーターサイクル, D-air®(エアバッグ)

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