一見すると、クラシックでビンテージ感の強いレザージャケット。
HF D1 LEATHER JACKETは、ダイネーゼの中でも「雰囲気」を楽しむモデルに見えるかもしれません。
しかし実際には、このジャケットはヘリテイジデザインの中に、ライディングを前提として考え方を落とし込んだモデルです。
なぜ、クラシックな外観の中に「安全」や「動きやすさ」を語る余地があるのか。
その理由を、構造と設計の視点から見ていきます。
基本情報
HF D1 LEATHER JACKET
DAINESEの創業年 ”1972年” と "SPEED DEMON" が描かれたヴィンテージデザインとクラシックなカットが特徴的なカジュアルレザージャケット。
※価格や仕様は予告なく変更される場合があります。最新情報はダイネーゼAGVジャパン公式サイトをご覧ください。
まずは本記事の主体となるHF D1 LEATHER JACKETについて、簡単にご紹介します。
1970年代のレーシングカルチャーをルーツに持つ、ヘリテイジテイストのレザージャケット。
一見するとクラシックな佇まいですが、随所にライディングを前提とした設計が取り入れられています。
では、HF D1はどのようにして、
"雰囲気重視”に終わらない一着に仕上げられているのでしょうか。
アクティブセーフティという考え方
――動きを妨げないことが、安全につながるという視点
ダイネーゼの製品設計を読み解く上で、重要なキーワードの一つが「アクティブセーフティ(能動的安全)」です。
これは、転倒後のダメージを軽減することだけでなく、ライディング中の操作性や体の動きを妨げないことによって、リスクそのものを減らすという考え方だと言えます。
実際、ダイネーゼの多くの製品では、
- ライディング姿勢を前提とした立体裁断
- 可動域を妨げにくいパターン構成
- 稼働中のストレスを抑えるフィッティング
といった点が、設計の初期段階から重視されています。
HF D1 LEATHER JACKETにおいても、こうした考え方は構造面から読み取ることができます。
ライディング中、ライダーの体は常に動き続けています。
肩甲骨や腕は頻繁に動き、前傾姿勢によって上半身には継続的にテンションがかかります。
この時、ジャケットが突っ張り動きを妨げてしまえば、それは着心地の問題にとどまらず、操作性にも影響します。
HF D1では、プロテクターや素材の話以前に、動作を妨げにくい構造そのものが設計の土台になっています。
ヘリテイジモデルに採用された「バックヨーク構造」
HF D1の背中には、バックヨークと呼ばれるT字の切り替え構造が採用されています。
デザイン上のアクセントにも見えるこの切り替えですが、構造としてみると肩甲骨の動きを想定した設計であることが分かります。
背中を一枚革で仕上げるのではなく、あえてパーツを複数に分割することで、
- 腕を前に出したときの突っ張りを感じにくい
- 前傾姿勢でも背中全体のフィット感が崩れにくい
といった効果が期待です。
これは、スポーツモデルに用いられるシャーリングと役割としては近いものです。
ただしHF D1では、
- 伸縮素材を使わず
- 裁縫とパターン構成によって可動域を確保する
という、クラシックな手法が選ばれています。
ヘリテイジらしい外観を保ちながら、ライディング時の動きを無視しないための構造。
バックヨークは、HF D1の立ち位置を象徴するディティールのひとつです。
ハンガーに掛けた状態や試着した瞬間よりも、実際にバイクに跨った時に印象が変わる。
腕を前に出し、前傾姿勢を取った時に、背中や肩回りの違和感が出にくい点は、走行中にこそ意味を持つ要素だといえるでしょう。
プロテクションは「主張しないが、確実に」
HF D1 LEATHER JACKETは、プロテクターを視覚的に強調するモデルではありません。
しかし、
- 肩・肘にCE規格プロテクターを標準装備
- ライディング姿勢を前提とした配置
- シルエットを崩しにくい設計
といった要素が、さりげなく組み込まれています。
プロテクターは、「付いていること」以上に、動作中に正しい位置を保てることが重要です。
HF D1では、外観の雰囲気を損なわず、必要な条件を満たす構成が取られています。
ヘリテイジと最新スポーツは、同じ原点を持つ
HF D1のようなヘリテイジモデルと、最新のレーシングスーツ。
見た目や素材は大きく異なりますが、
- ライダーはどう動くのか
- どこに負荷がかかるのか
- どこを守るべきか
という設計の出発点には、共通する問いがあります。
HF D1では、かつての構造的なアプローチをベースにしながら、それを現代の基準で再整理しているように感じられます。
まとめ
HF D1 LEATHER JACKET
DAINESEの創業年 ”1972年” と "SPEED DEMON" が描かれたヴィンテージデザインとクラシックなカットが特徴的なカジュアルレザージャケット。
※価格や仕様は予告なく変更される場合があります。最新情報はダイネーゼAGVジャパン公式サイトをご覧ください。
HF D1 LEATHER JACKETは、雰囲気重視の復刻モデルとも、ファッション性だけを優先したレザージャケットとも、少し異なります。
ヘリテイジという表現の中に、
- 動作を妨げにくい構造
- ライディング姿勢を前提とした設計
- 主張し過ぎないプロテクション
といった要素が、無理なく組み込まれています。
見た目はクラシックでも、設計の軸足はあくまでライディングギアにある。
HF D1 LEATHER JACKETは、ヘリテイジモデルでありながら、「走ること」を前提に選びたいライダーにとって、検討する価値のある一着だといえるでしょう。