AGVヘルメットの軌跡をたどってみましょう

作成日 2024年5月6日 | 最終更新日 2024年10月8日
By 堀嶋(ホリシマ)

こんにちは!

さて、前回までのブログはDaineseの歴史や発明、

そこに深く寄与した人物と事件を紹介いたしました。

こちらのリンクから前回のブログを閲覧できます↓

現代のレーシングスーツの基礎を作ったのはダイネーゼ?

・Part.1

・Part.2

・番外編

なので今回はAGVの軌跡を

皆さんと一緒にたどっていきたいと思います。

あまり知られていない内容が多いと思うので、

どうぞ最後までご覧くださいませ👍

 

時は1945年、第二次世界大戦が終わり、

ジノ アミザノ(Gino Amisano)という当時24歳の

イタリア人の青年が革を扱う靴工場の多い街である、

ヴァレンツァ(Valenza)でものづくりへの

熱い野心を持っていました。

そこで目をつけたのが自転車レース

アミザノ青年は街の革のスペシャリストと共に、

自転車のサドルカバーとレーシングサイクリスト

向けの軽量ヘルメットの製作を始めます。

 

...がしかし、そのわずか1年後に独立を決めます。

1人で経営した方が意見などの食い違いなど起こらず、

自分のやりたいことができる!として

自転車のことは忘れ、新たなる市場に手を伸ばします。

そこで目をつけたものがこちら。

イタリアといえば...な乗り物である、

VespaやLambrettaを代表する、

スクーターに将来性を見出した彼は、

専用のサドルカバーとクッションを製造する会社

AGVを1947年に設立しました👏👏

このAGVという社名は彼の名前と街の頭文字から

来ております👍

意外にも最初からヘルメットを作る会社では

なかったというのが驚きですよね。

さらにもっと驚くべきことに、

AGV製のサドルカバーが品質が良く、

評判が広まって1年の間に生産量は20台分から

1週間で700台分に増加と一気に人気商品になります。

それからスクーターがイタリアの街を中心に流行し、

AGVは大きく成長します。

アミザノには市場やブームを先取りする

才能があったのかもしれませんね🤔

 

十二分に贅沢な暮らしを送れるくらい成功した彼。

しかし、最初に惹かれた"レース"に対する

気持ちが残されていたのか、

定期開催される戦後最初のバイクレースに足しげく

通うようになりました。

その当時のレーサーの頭には

その場しのぎのレザーキャップのみで、

とても頭を守れる装備ではないことに

アミザノはショックを受けます。

ある日、2人のレーサーが大クラッシュ😱

目の当たりにしたアミザノは保護能力の高い、

レザーヘルメットの製作に乗り出しました。

 

...しかし、すぐに問題が発生😥

ヴァレンツァには革靴用の型は大量にありましたが、

ヘルメットを作るための型がどこにもありません。

柔らかいレザーキャップならどうにかなりますが、

硬いレザーヘルメットを作るとなるとどうしても

頭の形の模型、ないし型が必要です。

どうにかして頭の型が欲しい...

そこでアミザノはあることを閃きますが、

若かりしアミザノには大変思い切りと

勇気が必要なことでした。

街から少し離れたあるところへ彼は向かいます...

なんとあのレオナルド ディカプリオや

マイケル ジャクソンが愛用していた

当時世界で最も権威のある帽子会社、

Borsalino(ボルサリーノ)の本社に訪れ

ドアをノックしたのです。

ボルサリーノの方々は緊張したアミザノの言葉を聞き、

"ライダーを守りたい"という熱い思いに心打たれ、

なんと無償で頭の型を貸し出してくれたのです👏

そうして初のレザーヘルメットが完成しました👏

製造工程はとても手間のかかるもので、

型取ったレザーを122度のオーブンで1時間乾燥させ、

硬いシェルにした後、塗装が施されました。

ヘルメットに大事な要素はプロテクションだけでは

ございません。

被った時の快適性を求め、

衝撃を吸収するレザーパッドと中綿を仕込んで

"内装"を作りました👏

このAGVが送り出したレザーヘルメットは

多くのライダーから高い評価を得ました!

 

しかし、おちおちしていられない状況が続きます。

技術の進歩によりこれまで以上に

スピードが出せるバイクが登場しました。

これすなわち、クラッシュした際の衝撃も

これまで以上に大きくなるということ...。

アミザノはもっと安全性を高めなければ...!

とヘルメットの改良、主に材質変更を試みます🤔

"タイヤ...つまりゴムを新しい素材にできないか?"

そこでとあるタイヤ・メーカーが発明した、

生ゴムに硫黄を混ぜて加熱することで

化学反応が起こり、強靱な弾性と安定した耐熱性を

持つようになる加硫法を採用して、

新しいヘルメットづくりを加速させます...!

しかし、ここでもアクシデントが起こります。

AGVの競合他社が集まり、加硫法での生産工程の

独占権を取得したのです...

これによりまた新たな素材を

探さなければなりませんでした😥

アミサノは化学のプロフェッショナルと共に

セルロース繊維に、硬さ・コンパクトさ・

弾力性などの優れた特性を持たせる加工、

ケリゼーションという加工方法にたどりつきました。

一般的に分かりやすい言葉に変えると、

グラスファイバーを生み出すことに成功しました👏

アミザノは生み出したグラスファイバーを

ケリゼーションの頭文字であり、

ギリシャ文字で天に向け手をかざす様子を表し、

勝利を意味する"κ"※読みはKappa(カッパ)から

"Kappa fiber (カッパ ファイバー)"と名付けました。

"The Kappa fiber that beats everything"

訳:すべてを打ち負かすカッパーファイバー

とスローガンを打ち、大きな利益を生みました。

この"κ"という記号は現在のヘルメットである

K1 SK6 Sのネーミングルーツとなっております。

 

グラスファイバーヘルメットで人気を博しましたが、

AGVについて認知を拡大するために、

1958年、世界で初めてサーキットに広告を出し

更に映画にもAGV製品を提供したりと

数ヶ月のうちにAGVは有名になりました。

アミザノはバイク界で著名人となり、

"ヘルメットの王様"と呼ばれるまでになりました👑

 

そんな王は1人の英雄と運命的な出会いを果たします。

※右写真(左: アゴスチーニ 右: アミザノ)

Daineseのレジェンドライダーでもある、

Giacomo Agostini (ジャコモ アゴスチーニ)

強さとカリスマ性を見出したアミザノは

1967年のシーズンから当時異例の

スポンサー契約を結ぶことになります。

その2年後にヨーロッパ初のフルフェイスヘルメット

市場投入し、その高い安全性が認められ、

数々のレジェンドライダーを契約を結びます👏

Barry Sheene (バリー シーン)、

Kenny Roberts (ケニー ロバーツ)、

Angel Nieto (アンヘル ニエト)など、

彼らと共に数々のチャンピオンを獲得しました。

 

それから時代が進み1996年、

AGVは新たなるスーパースターと出会います。

彼の名はValentino Rossi (ヴァレンティーノ ロッシ)

普段は太陽のように明るい性格ですが、

いざレースになると夜のように明るさが消え、

冷酷にサーキットを支配するその二面性から

彼のトレードマークは"SOLE LUNA"

※日本語で太陽と月

そのマークを大胆にあしらった

とてもポップでアイコニックなデザインが

爆発的な人気を呼び、

AGVヘルメットの知名度も世界を股にかけ

そのブランドの名が知れ渡ることとなります。

その独創的で遊び心にあふれたなデザインのせいか、

彼のグラフィックモデルは人気が衰えません!

K1 SK3シリーズに彼のグラフィックモデルが

多数ラインナップされておりますので、

気になった方はぜひ覗いてみてください😌

 

そして時は流れ2007年、

AGVはワールドチャンピオンシップの成功という点で

同じ実績を持ち、同じイタリアの

革新企業であるダイネーゼに買収され、

両社は頭からつま先まで保護する

先進のソリューションにおける

専門知識を組み合わせることができるようになりました。

そして同年、

AGVは従来の考え方を覆し、

ヘルメットのシェル(1番外側のパーツ)からではなく、

ライダーの頭部からヘルメットを設計する

"AGV Extreme Standards"という

新しい統合技術設計・構造アプローチを発表します。

この取り組みによりAGVのレースフラグシップモデル、

PISTA GPシリーズがProject 46の名のもとに

開発され、テストはValentinoが直々に行いました。

そして2012年に実戦投入され、

PISTA GPがお客様にもリリースされました👏

2016年にはスポイラー、バイザー、ベンチレーション、

内装などに改良を加えたPISTA GP "R"がデビュー👍

その2年後、2018年にはスポイラー、内装の

構造を変更した現行モデル、PISTA GP "RR"となり、

現在もその系譜が続いております👏

10年以上大きくシルエットは変らないということは、

PISTA GPシリーズはレースヘルメットの

完成形といっても過言ではないと私は思います。

 

いかがでしたでしょうか?

AGVヘルメットの軌跡をたどると

ものづくりに対する

熱いイタリアンスピリットを感じますね!

これからもAGVは見ているだけで

惚れ惚れするようなデザインのモデルが続々と

発表されます!

ご予約など各店舗で受け付けておりますので、

気になった方はぜひお問い合わせくださいませ。

※ダイネーゼ大阪アウトレット店を除きます。

 

Caschi da Corsa dal 1947.

 

それでは次のブログでお会いしましょう!

Arrivederci~🏍️

Tags: モーターサイクル, 特許技術, ダイネーゼ, AGV, ヘルメット, K1 S, PISTA GP RR, K6 S, K3

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